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WORLD

香港は「天安門」と化すのか

米中新冷戦に翻弄される「絶望の街」

2019年9月号

 香港が再び国際政治の舞台の中心に立った。民主派の要求や反中デモは変わり映えしないが、今回は世界を驚かす持続力と実行力を示した。対する習近平政権は香港との境界に武装部隊を張り付けたものの沈黙を続ける。米トランプ政権と欧米メディアは「天安門事件の再来」への懸念を装いながら、手練手管で中国を挑発している。“香港騒乱”は香港市民の思いとは無関係にエスカレートする米中対立の戦線のひとつと化した。一方、立ち上がった香港市民の根底には民主化要求だけでなく、庶民の生活難、格差拡大への不満もある。香港騒乱は米中の思惑と世界の誤解のなかで危機が刻一刻と近づいている。
「山が海に迫り、海は澄み、波穏やか」とドイツの外交官が評し、夏の避暑地として外国人が殺到して開発された河北省北戴河。世界にはリゾート地としてよりも中国共産党幹部、長老の夏の非公式会議の場として名が通っている。夏でも三十度を超す日は珍しい北戴河だが、共産党幹部の非公式会議が開催された今年八月上中旬は連日、三十五度にも達する異常な熱波に見舞われた。
 だが、熱かったのは外気だけでなく、今年の最大のテー・・・