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中国「不妊治療」 一千万人の壮絶

各国が「患者争奪戦」に本腰

2019年10月号

アジアの不妊治療が激変の渦中にある。引き金は中国による二〇一五年十月の「一人っ子政策」解除だ。一七年には、第二子の出生数が第一子を上回った。その第二子を切望する中国人にとって不妊症は深刻な問題である。彼の国の不妊症の有病率は一五~二〇%。出産適齢期(二十一~四十九歳)の女性は約三億一千万人。このうち四千万~五千万人の女性が不妊に悩み、約一千万人が治療の対象になる。二人目は欲しいが、高齢出産になってしまう女性もいる。
 ところが、中国には需要を満たすだけの不妊症治療施設はない。一九年五月時点で、中国政府が認定した「不妊治療施設」は全土で四百九十七に過ぎず、上海や北京でさえ二十施設程度。多くは公立の総合病院で手続きは煩雑だ。
 四十代の中国人患者は「治療に入るまで半年から一年は待たねばならない。予約を取るために夜中から並んだり、ダフ屋から高額で診療予約券を購入したりするのが当たり前」と言う。そんな中国人の不妊治療を巡り、世界で「争奪戦」が繰り広げられている。

「生殖補助医療ツーリズム」の隆盛

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