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太平洋を乗っ取る中国

島嶼国家「親中化」が日米の脅威に

2019年10月号特別リポート


 七十四年前の一九四五年、八月十九日付のニューヨーク・タイムズ紙に当時の花形記者ジェイムズ・レストン記者が「日本に代わって米国が太平洋の覇者になった」との美文調の記事を書いている。米国からすればかつての日米戦争は太平洋の覇権を争う「太平洋戦争」だった。敗者の日本は専守防衛を掲げて自国に閉じこもったまま。代わりに登場してきたのは中国である。政治、軍事、経済、先端技術、サイバー、原発などあらゆる部門で世界的な展開を一帯一路政策に盛り込んで推進している。中央アジア、アフリカ、中南米へと行動は全世界に及ぶが、派手な進出の陰で注目されなかったのが、南太平洋に点在する島嶼国家群への働き掛けだ。
 九月十六日にソロモン諸島が、二十日にはキリバスが相次いで台湾と外交関係を断絶すると発表した。中国とソロモン諸島はすぐに国交樹立を発表した。キリバスとの国交樹立も時間の問題と見られている。この地域で台湾と外交関係を持つ国はマーシャル諸島、パラオ、ナウル、ツバルの四カ国となった。台湾派は中南米九カ国、アフリカ一カ国、バチカンを加えると十五カ国になる。中国が十月の建国七十周年に合わせて台湾・・・