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政治

沖縄に「核」が 置かれる日

政権を悩ます米「中距離ミサイル」問題

2019年11月号

 米国とロシアの中距離核戦力(INF)全廃条約が今年八月に失効したことは、北東アジアの安全保障に重大な影響を及ぼすと国際的に受け止められている。ところが、その危機感とは裏腹に、日本の大手メディアは事実関係を断片的に報じるのみで、想定される衝撃の大きさは国民に伝わってこない。北朝鮮やロシアの「脅威」に対抗しなければならない日本にとっては他人事どころか、この失効の波動が直撃するのだ。米国が「アジアに中距離ミサイルを配備する」と公言しているにもかかわらず、安倍政権は「知らぬ、存ぜぬ」の姿勢を崩さない。憲法改正を叫び、その費用対効果も怪しい地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入に邁進するよりも、日米同盟の将来像と真正面から向き合うのが先決である。
 この条約は、米国と旧ソ連が冷戦末期の一九八七年、当時のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長とレーガン米大統領が調印し、翌年に発効。双方が地上配備の中・短距離ミサイル(射程五百~五千五百キロ)を発効後三年以内に全廃すると定めて、九一年までに計二千六百九十二基を廃棄した。ソ連側は当初、冷戦最前線のウラル山脈以西の欧州で全廃すると・・・