三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

豚コレラ感染拡大は「大失政」

ワクチン接種はなぜ遅れたか

2019年11月号

 昨年二十六年ぶりに国内で発生した豚コレラの感染は関東に拡大、殺処分は約十四万頭に達し、農林水産省はワクチン接種の容認に追い込まれた。対策はすべてが後手に回り、二〇一〇年に宮崎県で発生し、牛・豚など二十九万頭余りを殺処分した口蹄疫以来の大惨事を招いている。当時の民主党政権が半年で終息させたのと比べると、大失政というほかない。
 豚コレラには有効なワクチンが開発されている。岐阜県など初期の発生地では早い段階からワクチン接種の強い要望があったのに、「官邸忖度」と「アフリカ豚コレラ対策」の二つの思惑が、農水省の決断を鈍らせた。
 同省は「ワクチンを接種すると日本は国際獣疫事務局(OIE)が定めた清浄国の地位を失い、貿易条件の優位性を失い輸出が困難になる」と説明してきた。ただ豚肉の輸出実績は十億円程度にすぎず、そのうち香港が約七億円を占める。香港は清浄地域ではなく、ワクチンを接種しても輸出への影響は限定的だ。
 説得力に乏しい説明を繰り返してきた農水省の真意は不明だが、安倍政権は農政改革の柱として農産物の輸出促進を掲げている。官邸主導の政策に逆行するのは「できれば・・・