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連載

《世界のキーパーソン》ジブラン・バシル(レバノン外相)

レバノン「大規模デモ」のやり玉

2019年11月号

 シリア情勢に世界の目が注がれた十月。中東のレバノンとイラクでも大規模デモが連続して起こり、新たな変動の波を予感させた。特にレバノンでは首都ベイルート、港湾都市トリポリを中心に全土で、街頭抗議が続いた。
 バシルはその象徴的存在。といっても、デモを率いる側ではなく、「誰もが憎む男」としてデモ隊を結びつける。バシルを罵るスローガン、掛け声は何種類も生まれ、卑猥な言葉を使ったどぎつい侮辱もある。いずれも街頭とSNSで大ヒット中だ。
 レバノンはマロン派キリスト教徒、イスラム教シーア派、同スンニ派が三大勢力。バシルはマロン派で、若くして同派の政党「自由愛国運動」に加わり、ミシェル・アウン現大統領の次女と結婚した。つまり、大統領の娘婿である。三十代で愛国運動の指導者になり、重要閣僚を歴任して、二〇一四年から外相を務める。
 大手紙中東特派員は、「アウン大統領は自分の後継と目している。レバノンではマロン派が大統領職を占める伝統だから、次期大統領になる可能性が高い」と言う。アウン一家の外遊は王族のようだ。
 問題はそんな人物が、強硬な反移民論をぶつこと。「こ・・・