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社会・文化

政治の玩具と化す 文化庁「芸術助成」

歪み続ける補助金審査の現場

2019年11月号

「文化への助成はどの国でも火種を抱えている。しかしここまで露骨な政治介入は聞いたことがない。先進国として恥じるべきだ」。国内外の舞台芸術の事情に詳しい演劇業界関係者は、文化庁が先に閉幕した「国際芸術祭あいちトリエンナーレ2019」の補助金交付決定を取り消したことについて、「政治介入」という言葉を使ってこう評した。企画展「表現の不自由展・その後」は慰安婦少女像など政治色の強い展示があり、大きな物議を醸したのは事実。しかし、すでに決まっていた補助金を取り消すのは、表現の自由をなきものにする検閲につながりかねない危うさを孕む。右傾化する官邸の意向をあからさまに忖度した文化庁。日本の文化振興は「いつか来た道」に後戻りを始めている。

「金は出すが口は出さない」原則

 芸術や文化に対する助成は、文化庁所管の日本芸術文化振興会が助成対象を審査・決定する仕組みで、建前上、文化庁は助成先の決定プロセスに関与しないことになっている。これは、文化芸術に対する助成に関して英国で採用されている「アーム・レングス原則」と呼ばれる考え方を・・・