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経済

事業再生ADR成立の文教堂  無理筋の再建策を冷笑する書店業界

2019年9月号公開

 九月末に何とか事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の成立にこぎつけた書店準大手の文教堂グループホールディングス(GHD)に対して、市場関係者からは「これで本当に再建できるのか」との声がしきりだ。みずほ銀行など取引金融機関六行が十二月二日付で総額四十一億六千万円のDES(債務株式化)を引き受ける一方、発行済み株の二八%を持つ筆頭株主の日本出版販売が五億円を追加出資するものだが、文教堂GHDは今年八月期末で四十二億一千二百万円もの債務超過に陥っており、一連の増資が実現しても純資産は四億円余にしか回復せず、ちょっとした最終赤字を計上しただけで債務超過に逆戻りしてしまうのだ。
 アマゾンによる出版流通の破壊や電子書籍の普及などで書店ビジネスは逆風下。文教堂GHDは不採算店舗の閉鎖や赤字のキャラクターグッズ販売事業のビックカメラグループへの売却、利益率の高い文具販売の強化などで二〇年八月期に一億円強の最終黒字(前期は四十億円弱の赤字)復帰を目指すとしているが、業界筋は「画に描いた餅」として一蹴。「再建策ではなく延命策」と皮肉っている。 (2019.11.18)