三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

日米貿易協定「ウィンウィン」の大嘘

米国「隷従」で売国の安倍政権

2019年12月号

 戦後の自由貿易体制が確立して以来、最悪の貿易協定が年明けにも発効する。安倍晋三首相が「(敗者不在の)ウィンウィン」と自画自賛する日米貿易協定だ。国会の審議は、与野党間だけでなく野党内でも論点がずれており、議論は不毛で盛り上がらなかった。後世に禍根を残すことは確実だ。
 日米貿易協定は、知的財産権の保護や投資のルールを含まず、物品を対象にした古典的な関税引き下げが実態であり、とても自由貿易協定(FTA)といえるような代物ではない。だからこそ政府は苦し紛れに物品貿易協定(TAG)という造語をでっち上げた。
 確かに嘘や隠蔽が多い安倍政権だが「日米FTAはやらない」という点に関しては例外的に正直だった。自国の自動車産業を保護したいトランプ政権が相手ではFTAなどやりたくてもできないというのが、より正確だ。それなのに野党は「(FTAを)隠蔽するための造語だ」と的外れな批判を展開した。
 日米貿易協定は、本当はFTAではないのに、世界貿易機関(WTO)のルール違反を回避するため、形式的に「中間合意」と位置付け、純度の高い本物のFTA、つまり関税の実質的全面(sub・・・