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連載

をんな千一夜 第33話

沖縄「辻遊郭」再建を夢見て
石井妙子

2019年12月号

《上原栄子》

 沖縄の首里城が炎に包まれ焼け落ちてしまった。十五世紀から明治初年まで琉球を統治してきた王族、尚氏が居住した王城である。
 ただし今回、失われた建物は、平成に入って再建されたもので歴史的な建造物ではない。第十三代尚敬王のもと一七一五年に建てられた壮麗な城は、一九四五年の沖縄戦で焼失したからだ。
 中国と日本に挟まれて独立を守ってきた琉球だが一八七九(明治十二)年、ついに日本にのみ込まれ沖縄県が設置されると、尚王家の人々は強制的に東京へ移住させられた。主を失った首里城は、日本人支配者の手に渡り、太平洋戦争で灰と化すのである。
 一方、那覇には、もう一つの「城」があった。十五、六世紀頃につくられ、四百余年にわたって存在した遊郭「辻」である。
 辻とは琉球言葉の「チージ」に由来し、「高いところ」「頂き」を意味するという。女だけで運営された世界的に見ても類のない遊郭で三千人の「尾類」と呼ばれる遊女が暮らした、女の城であった。
 伝説では唐人に身を汚された尚家の王女が、「もう城・・・