三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

イラン「中東支配」の野望が頓挫

「シーア派の弧」が崩壊寸前に

2019年12月号

 上空のヘリコプターから実弾が撃ち込まれる。屋根の上からは、完全武装のスナイパー(射撃手)が次々と発砲する―。
 十一月中旬のイラン国内の光景だ。国際人権団体には、首都テヘランを含めて二十以上の都市から、真昼の惨劇の生々しい映像や証言が届いた。イラン当局は、今回の反政府デモにパニックを起こしたかのように反応し、戦争さながらにデモ隊に襲い掛かった。
 同時期に、イラクとレバノンでも、両国内におけるイランの影響力に対して、「イランは出ていけ!」と連呼する、激しいデモが連日続いた。イランは過去数年で、「シーア派の弧」と呼ばれる幅広い影響圏を築き上げたが、そのほぼ全域で「反イラン」の抗議の嵐が吹き荒れる。中東の「イラン支配の終わり」が始まった。

デモ弾圧は「市街戦」の様相

 テヘランに特派員を置く大手新聞社デスクは、「インターネットが遮断され、連絡がつきにくい。駐在員の安否をつかむのがやっとだ」と言う。十一月二十日には、国際人権団体の推計でイラン国内から国外へのネット接続率は四%に落ち、まるで戦争・・・