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経済

《企業研究》キーエンス

真似できない「規格外」優良経営

2019年12月号

 今年十一月一日、株価は上場来高値を更新して時価総額は九兆円を突破、ソフトバンクグループ(SBG)を抜いて東証一部で四位に浮上した。前日に発表した株式二分割に伴う実質増配を好感、投資家らの買いを集めたのだ。その後も株価は三・七万円前後の高値圏で推移。足元では、米シェアオフィス大手ウィーワーク救済問題などで弱含むSBGに時価総額で三千億円余りの差をつける。もはや上にはトヨタ自動車、NTTとNTTドコモしかいない。
 キーエンス―。工場の自動化などに欠かせないFAセンサーなどを手掛ける検出・計測制御機器大手だ。米中摩擦の煽りを受ける形で二〇一九年四~九月期こそ純利益が前年同期比一三・三%減の九百八十五億円と十年ぶりに最終減益に陥ったものの、一九年三月期まで七年連続で最高益を更新。従業員の平均年収は二千百十万円(平均年齢三十五・八歳)と国内最高水準を誇る。
 驚くべきはその収益構造と財務だろう。売上高営業利益率は一九年三月期で五四・一%。自己資本比率は九月末時点で九五・三%と十割に迫る。各種統計などによれば日本の製造業の営業利益率は平均で五・五%、自己資本比率は三二%弱だ・・・