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連載

《世界のキーパーソン》ウィリアム・ピール伯爵(英宮内長官)

ヨーク公「性犯罪疑惑」という難題

2019年12月号

 英国のエリザベス女王は、今年はどんなクリスマス・メッセージを用意しているだろうか。
 二十七年前の一九九二年には、次男ヨーク公(アンドリュー王子)が別居し、娘のアン王女が離婚。居城のウィンザー城が火事になった。「今年は、アナス・ホリビリス(ひどい年)だった」と、年末のメッセージで真情を吐露した。
 二〇一九年は、孫のサセックス公(ヘンリー王子)に第一子が生まれ、英王室はいよいよにぎやかになったものの、内情はさんざんだった。同公とメーガン妃は、英タブロイド各紙と派手な論戦に陥った。英国の欧州連合(EU)離脱問題では、ボリス・ジョンソン首相の保守党に振り回された。
 女王は首相の決定を裁可する。それがたびたび下院や国内の裁判所で覆された。女王の判断はあくまで形式だが、下院の否決や裁判所の判決では、「女王の裁可が覆った」ことになる。
 宮内長官であるピール伯爵は、「女王は保守党政権にお怒りだ」と再三、メディアにリークさせた。王室の最前線に立って、時の政府とかかわる宮内長官にすれば、ジョンソン首相は、女王を盾にしてEU離脱実現を進めようとする、不届き者・・・

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