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WORLD

英国をさらに「爆買い」する中国

EU離脱で「紅い資本」頼みが鮮明に

2020年1月号

 欧州連合(EU)から離脱する英国で、中国と香港の資本が主力産業や不動産を買いまくっている。首都ロンドンの金融街でも、「これでニューヨークやパリに差をつけられる」と、中国の英国進出を歓迎する気運が強まっている。「EU離脱で英国は孤立する」との観測をよそに、東アジア、欧州、北米の三大経済圏を結ぶ金融ハブが台頭する気配だ。
 香港が民主派の抗議活動に大揺れだった、二〇一九年秋。
 ロンドンの不動産各社は、香港マネー到来に沸き返っていた。百万ポンド(約一億四千万円)以上の高級不動産が飛ぶように売れる。「香港の富裕層だけでなく、中国本土資本も入ってきた。ポンド安と香港情勢不安もあるだろうが、EU離脱後をにらんで、英国買いの意図がはっきりした」と、あるロンドンの不動産業者は語る。
 ロンドンに続々誕生する摩天楼では、香港の「李錦記」社が一七年に、「ウォーキー・トーキー(トランシーバー)」の異名を持つ高層ビルを買収した。同社は、オイスター・ソース販売で有名な「牡蠣油王」李錦記が十九世紀に創業した。李文達会長は三代目で、食品業から不動産まで幅広く手掛ける。買収価格は十三・・・