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連載

Book Reviewing Globe 428

二十一世紀の戦争の原則

2020年1月号

 二〇一九年五月、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、トマス・フリードマンはCNBCの番組でスティーブ・バノンをインタビューした。その中で、彼は、トランプ大統領が中国の不公正貿易取引に対して対中関税を引き上げたことについて「スティーブが言ったことに全面的に賛成だ」と述べた。
 すこし前まで、キッシンジャーと同じように中国との“共生”を説いてきたフリードマンが、中国との「文明の衝突」を唱えるバノンと唱和するまでに米国の対中観は変わった。
 経済のファンダメンタルズの変化がその背景にはある。
 〇一年から一七年の間、米国は対中貿易によって三百四十万人が職を失った。そのうち七五%は製造業だった。この間の製造業の失業者は製造業就業者全体の三三%に上った。これは戦前の大不況時の三一%より高い。とりわけ、中国の世界貿易機関(WTO)加盟が米国市場への中国製品の洪水のような流入を促した。「中国の中産階級の台頭は米国の中産階級の崩壊を招いた」というバノンの地経学的テーゼをフリードマンも受け入れざるを得なかったのである。
 米国の対中不・・・