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連載

日本の科学アラカルト 113

実用化が期待される 「超伝導技術」の研究

2020年1月号

 十二月にスウェーデンで行われたノーベル賞授賞式では、化学賞を受けた吉野彰氏が出席。記念講演では、持続可能な社会と電池の役割について語った。
 日本には、他にもノーベル賞候補者がひしめいているが「超伝導」もひとつのキーワードとして注目される。鉄系の高温超伝導物質を世界で初めて発見した東京工業大学フロンティア研究機構教授の細野秀雄氏や、準結晶超伝導転移という現象をみつけた名古屋大学などのグループは有力候補だ。
 超伝導とは簡単にいえば、物質の電気抵抗がある状態下でゼロになること。ノーベル物理学賞受賞者でもあるオランダ人学者のオネスらによって、水銀の電気抵抗が、四・二Kという極低温下で消失することが発見された。
 通常の超伝導といえば物質を絶対ゼロ度付近にまで冷やした場合に観測され、高温超伝導の場合は、それが百Kほどに高くなることが知られている。超伝導状態にする要素は基本的に温度のみだ。しかし近年は、これに「光」という要素を加えて超伝導状態を実現する研究が進められている。
 光誘起超伝導―。これは特定の条件下で、ある光を照射した場合に超伝導状態になる・・・