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ロシアの闇部隊「29155」の実像

ヘマも多い「凶悪特務機関」

2020年1月号


 ドイツで暗殺事件、英国では化学兵器使用、東欧でクーデターや政権揺さぶりの陰謀―。
 まるでスパイ映画の活劇のような国際秘密工作を、ロシアのエリート特殊部隊隊員が実行していることが分かった。「29155部隊」を筆頭とする、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)内のスパイチームである。欧州を中心に世界各地に飛んで、政治謀略や暗殺を次々と企てている。
 数多くの殺人に関与し、凶悪な特殊部隊であることは間違いないが、大半の事件で痕跡を残してしまうという欠陥もある。ロシア国家の粋を集めた、無慈悲で残虐、少々間抜けな特務機関の話である。

犯行がバレたベルリンの射殺事件

 二〇一九年八月二十三日の白昼。ベルリン中心部を流れるシュプレー川に、電気自転車を投げ込む、スキンヘッドの男がいた。不審な包みも投げ捨てていた。
「あいつ、何をしているんだ」
「警察に知らせた方がいい」
 目撃していた若者二人が近くの警官のもとに走った。不審な男は、人ごみに紛れ込もうとしたとこ・・・