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南米で影響力拡大するイスラエル

右派政権の暴政を堂々支援

2020年2月号

「わが国を支援してもらうため、イスラエルを招請した。彼らはテロリスト対策に長け、扱い方をよく知っているからだ」
 ボリビア暫定政権のアルツーロ・ムリロ内務大臣は、二〇一九年十二月七日のロイター通信の配信記事でこう語った。同大臣の発言は仔細が不明ながら、中南米における新たな政治変動の一端を示しているだろう。すなわち、イスラエルの新たな影響力拡大だ。
 ボリビアでは昨年十一月のクーデターで、エボ・モラレス前大統領の社会主義政権が崩壊。代わって登場した右派主導の暫定政権は、〇九年一月に前政権が断絶したイスラエルとの国交回復を即決定した。そしてムリロ大臣によれば、「テロリスト」とはベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領とつながる左派勢力を指す。だが実際には今年五月予定の総選挙前に、イスラエルの何らかの支援で前与党「社会主義運動」に弾圧が加わりかねない。
 もし冒頭の発言を国際的な人権団体が聞いていたら、関係者は一九五〇年代から八〇年代にかけての中南米の暗黒史を思い起こしたはずだ。同時期、大半の国で軍事独裁政権が出現して無数の人権侵害が記録されたが、イスラエルはそうし・・・