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経済

《クローズ・アップ》岡藤正広(伊藤忠商事会長兼CEO)

「悲願」のトップ商社と経団連副会長へ

2020年2月号

 伊藤忠商事が“悲願”のトップ商社へ躍り出そうだ。今年度の純利益計画は五千億円だが、非資源事業の好調により三百億円程度の上振れ余地がある。対照的に稼ぎ頭の原料炭が不振の三菱商事は「計画の五千二百億円は達成微妙」とみられており、利益首位は逆転する可能性が高い。
「三菱が五千二百億なら、ウチは五千二百一億や!」
 会長兼CEOの岡藤正広は、実質トップの奪取へ執念を燃やす。“実質”とは、伊藤忠は二〇一五年度に初めて利益首位に立ったが、このときは三菱商事が資源事業の巨額減損により赤字へ転落しており、いわば不戦勝だったからだ。とりわけ今年度の実質トップに注目が集まるのは、それが岡藤の経団連副会長就任の弾みとなるからにほかならない。またそこには別の意味もある。
 経団連副会長の任期は四年。今春、社長・会長としてCEO在任丸十年となる岡藤が財界諸侯の地位を得れば、通算十四年、権力を保持することになる。伊藤忠“中興の祖”である五代目社長・越後正一の在任期間に並ぶのだ。しかも、越後すら成し得なかった同社・・・