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連載

大往生考 第2話

「手かざし」に救われた医師

2020年2月号

 白血病を治療中の競泳・池江璃花子選手が、タレントのなべおさみ氏から「手かざし療法」を受けていることが話題になっている。メディアは批判一色だが、池江選手は騙されているだけなのだろうか。
 筆者は、この事例の背景を知らない。ただ、そんなに単純な話ではないと思う。それは、筆者の知人に民間療法を行う有名女優に救われた医師がいるからだ。
 今から二十年以上前のこと。当時、その知人は都内の総合病院の血液内科に勤務していた。
 患者は四十代後半の男性だった。慢性骨髄性白血病と診断され、入院となった。
 慢性骨髄性白血病は、池江選手が発症した急性リンパ性白血病とは違い、経過は緩慢だ。多くの患者は無症状で、健康診断で白血球が多いと指摘される。
 この病気が面倒なのは、発症から数年で急性転化することだ。これは急性白血病のようになるということで、白血病細胞が急速に増えて、放置すれば、出血や感染で亡くなる。
 当時、この病気の平均生存期間は五年間という死の病だった。唯一の治療法が造血幹細胞移植だった。池江選手も受けた治療法で、大量の抗がん剤や放射線・・・

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