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連載

をんな千一夜 第35話

岸家四代の核となった「晋三の母」
石井 妙子

2020年2月号

 《安倍 洋子》

 名前には親の期待や願いが込められるものである。
 安倍晋三総理には、兄と弟がおり実際には三人兄弟だった。上から寛信、晋三、信夫で並べてみればわかるように、総理ひとりが大好きな祖父・岸信介の一字を与えられていない。
 総理の父は安倍晋太郎、母は「昭和の妖怪」と言われた岸信介の娘、洋子である。信介には信和と洋子の二子がおり、本来なら兄の信和が岸家の跡取りであった。だが、彼は小児麻痺を患い健康に恵まれず、政治の道には進まなかった。そこで代わりに妹である洋子が父の意を汲み、政治に関わっていった。
 洋子はまず、父が見込んだ毎日新聞政治部記者の安倍晋太郎と見合いをし、結婚する。
 安倍家も岸家と同じく山口県の出身。晋太郎の父は衆議院議員だった安倍寛で、信介とは東大の同級生だった。しかも、その寛はすでに死亡している。家に迎えるには最適な条件がそろっていると信介は見たのであろう。洋子も父の思惑を察知していた。
「(見合いをさせた)すでにその時にはもう安倍を将来の跡継ぎにしたい・・・