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イラン危機で「中東核拡散」の悪夢

サウジとトルコの「仰天シナリオ」

2020年2月号

 米国がイランの「イスラム革命防衛隊(IRGC)」のカセム・ソレイマニ司令官を殺害したことで、中東核拡散ドミノの恐れが高まっている。イランがウラン濃縮活動の強化など、「核合意」履行停止の枠を公然と拡大しているのに続き、サウジアラビアとトルコが、核兵器保有への野心を公言し始めた。
 核兵器開発は長ければ数十年を要するが、核開発を積み重ねたイランは、数カ月で兵器級濃縮ウランを獲得できるとされる。技術的実績の乏しいサウジアラビアとトルコには、核兵器保有の驚きのシナリオが潜んでいる。

イラン核ミサイル開発は「二年ほど」

 一月十七日のテヘラン。
 金曜礼拝で、最高指導者アリ・ハメネイ師が八年ぶりに説教に立った。生中継で注目されたのは、ハメネイ師の言葉ではなく、テレビのカメラワークだった。
 説教に先立つ前座では、詩の詠唱の形で、「偽善者」という言葉が登場した。すると、聴衆は、「偽善者に死を!」「偽善者に死を!」と唱和した。イラン指導部で、比較的穏健な立場のハッサン・ロウハニ大統領を、攻撃・・・