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プーチン王朝 「不滅化」のシナリオ

権力と富を独占する「新貴族階級」

2020年3月号

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、「終身指導者」に向けて早くも新体制作りに乗り出した。
 任期が終わる二〇二四年以降は、名目的な国家元首から離れ、中国の鄧小平のように、最高実力者の道を歩むシナリオだ。新体制を支えるのは、プーチン世代の息子や娘たちで、新しい貴族階級としてロシアに君臨することになる。
 昨年七月、国営テレビ「ロシア1」を見ていた視聴者は、どことなく見覚えのある若い女性に目を止めた。字幕には「小児内分泌学者 マリア・ウォロンツォワ」とある。それまで全く無名だった女性は、キャスターの質問に答えて、自分が経営する小児医療専門の新会社の説明をしていた。
 見覚えがあると感じたのは、プーチン大統領の長女で、父親の特徴を受け継いでいるからである。
大統領は以前、「娘たちは普通の子供で、目立ったところは何もない」と語ったが、長女は医学博士号を取得し、数十億円規模の医療会社の経営者として、視聴者の前に姿を現した。父親が大統領になった後は「ウォロンツォワ」と名乗ったが、今はオランダ人実業家と結婚して「マリア・ファーセン」が本名である。
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