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経済

日本電産「社長使い捨て」の悪弊

「傍流経営者」永守の限界と焦燥

2020年3月号

 日本電産の社長に日産自動車の副COOだった関潤氏が就任、吉本浩之社長が副社長に降格されることになった。上場企業では異例のトップ人事は創業者、永守重信会長がすべて決めたものだ。過去数年、次々に自らの後継候補を招聘しては切り捨てる永守氏の“トップ・ハンティング”に社内は混乱している。「二〇三〇年度に売上高十兆円」という夢物語をぶち上げ、実現のために人材をすげ替える姿には「日本の産業界で今なお成り上がりの傍流扱いしかされない」(財界関係者)永守氏の焦りが隠されているだろう。世界最大のモーターメーカーの創業者の「飢え」は尽きない。
「使い捨てマスクでももっと大事にされるよなあ」。京都の老舗企業の幹部が今回の社長交代を新型コロナウイルス対策になぞらえてこう表現した。吉本社長は一八年六月に就任したばかりで、実質6四半期の業績だけで社長として能力不足と永守氏に烙印を押されてしまった。その期間はトランプ大統領が対中攻撃を始め、米中摩擦で中国市場の熱気が急速に冷め、同時に自動車など世界の産業が市場収縮にさらされた期間そのもので、「永守氏が社長をやっていても結果は同じ」・・・