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経済

《地方金融の研究》七十七銀行

宮城県復興のシンボルを「ポイ捨て」

2020年3月号

 一・八万人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災からまもなく丸九年。東北地方や関東地方北部の太平洋沿岸を襲った巨大津波と、一時は「首都圏壊滅」すら想起された東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故の記憶はいまも人々の脳裡に鮮明に蘇ってくるに違いない。
 ましてやこの銀行にとってはなおさらだろう。拭おうとしても到底拭い切れないほどの「悲劇」を百五十年近いその社史の一ページに刻みつけることとなったからだ。女川支店(宮城県女川町)が高さ二十メートルを超える津波に呑み込まれ、当時勤務していた十四人の行員のうち十二人が死亡または行方不明になるという大惨事に見舞われたのだ。
「あなたのこと、あの日のことを忘れない」。震災から約六年半の歳月を経て二〇一七年九月に営業が再開された女川支店。その隣接地にこう刻まれた鎮魂の碑が立つ。
 七十七銀行―。失われたのは無論、人命ばかりではない。店舗は損壊し、ATMは水に浸かってネットワークが各地で寸断。震災直後の一一年三月期決算ではこれら一連の固定資産関連損失や被災した融資先に対する貸倒引当金の追加繰り入れなど五百億円規模の特・・・