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連載

西風466

湯の街を「舞台芸術の首都」に

2020年3月号

 兵庫県北東部にある城崎温泉は古くから湯治場として愛され、志賀直哉の小説『城の崎にて』でも有名だ。しかしアクセスはよくないため、京阪神の奥座敷というよりは遠く離れた別荘のようなイメージだ。城崎町は平成の大合併で、周辺五市町と合流して豊岡市に編入されている。城崎温泉以外ではコウノトリ生息地として関西エリアでは少しだけ知られる、目立たない自治体である。
 その豊岡市をアートで盛り上げようという動きがある。劇作家で演出家の平田オリザ氏が中心となり、同市を「舞台芸術の首都にする」と鼻息が荒い。
 平田氏は昨年、豊岡市に移住。主宰する劇団「青年団」も今年中に活動拠点を東京から移転する。さらに来年四月には演劇を学べる初の公立大学「兵庫県立国際観光芸術専門職大学」(仮称)がJR豊岡駅近くに開校して、平田さんが学長に就任する予定だ。
 一年次には全寮制で全員が演劇を学ぶというユニークな大学になる。但馬地域にはこれまで四年制大学がなく、地域にとっても待望の学校となっている。
 きっかけは、二〇一四年に設立された「城崎国際アートセンター」(KIAC)の芸術監督に平田・・・