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政治

安倍政権を蝕む「新型肺炎」

「勇退・後継」シナリオが瓦解

2020年3月号

 風向きは変わり、政権内の歯車も狂い始めた。新型コロナウイルス対応の初動の不手際と、時を同じくして起きた検察人事への介入に対する激しい非難が、政権の体力を奪っているのだ。総理大臣・安倍晋三が自由民主党総裁の任期を終えるまで十九カ月、憲政史上最長の在任記録にふさわしいレガシー(遺産)を残すどころか、大団円を迎えられるかどうか不安視する見方も出始めている。
 通常国会の召集直後の一月下旬、総理大臣官邸の一室で「神風だ」とざわめく声があった。新型ウイルスの感染拡大が、世間の関心を「桜を見る会」や統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件からそらす展開に興奮する安倍側近らだった。
 中国・武漢で大量発生した謎の肺炎患者から検出された新型ウイルスの感染が、日本で初確認されたのは一月十六日。その四日後に始まった通常国会で、野党の質問は案の定、「桜」とIRに集中した。安倍は「同じ答弁を繰り返すだけだから楽」とうそぶいたものの、周辺は「前夜祭の領収書の扱いは違法ではないがグレーゾーンだ」と危惧していた。
 苦境を救ったのが、新型ウイルスの国内感染拡大だ。一月二十八日に武漢の邦・・・

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