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社会・文化

危機で変貌のクラシック音楽界

疫病でも活路探る欧米の「芸術力」

2020年6月号

 アジアで都市や国境封鎖が相次ぎ、欧州でも北イタリアでの感染拡大がアルプスを越える不安が漂い始めていた三月八日、アムステルダムのコンセルトヘボウで復活祭期間前恒例のバッハ作曲《ヨハネ受難曲》の演奏会が開かれた。この公演に向けた練習で、老舗アマチュア団体アムステルダム混声合唱団の百人が新型コロナウイルスに感染、団員とその家族四人が没する。クラシック音楽界で記録された最大の集団感染である。直後、EU各国に足並みを合わせ、オランダ政府もロックダウンを開始、世界屈指の名コンサートホールも閉鎖された。
 COVID-19パンデミックには、対人接触を控える以外に有効な対処法がない。接客業や飲食業などと共に、舞台芸術はそんな素朴な方策の直撃を被る業種となる。当初は四月半ば復活祭休暇明けの活動再開を目指した欧州各国だが、五月下旬になっても微かな光明が差す程度。半年以上の準備期間が必要な大規模なオペラ新演出や世界から人が集まる国際コンクールは、年内開催は絶望的という観測が広がりつつある。
 アーティストはもちろんのこと、舞台スタッフや劇場関係者も仕事を失った。米ニューヨークのメトロポ・・・