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シベリア永久凍土「溶解」の惨状

極北都市に迫る「地盤陥没」の脅威

2020年7月号

 ロシアのシベリア地方が「十万年に一度」という異常高温に見舞われている。今年五月の平均気温は例年より十度も高く、記録破りの猛暑が予想されている。
 異常高温で永久凍土(ツンドラ)の溶解が起こり、建造物が崩壊する事故も報告された。都市全体が陥没する予兆も伝えられる。
 近年深刻化する一方の森林火災は、今年は一段とひどくなるとの見通しが強まっている。シベリアのメルトダウン(溶解)は、日本も含めた近隣を越えて、地球全体に影響を与えそうだ。

「十万年に一度」の異常熱波

 シベリアのベルホヤンスクと言えば、オイミャコンと並んで「世界一寒い町」に挙げられる北極圏の寒冷地だ。一八九二年には氷点下六十七・八度を記録した。冬は例年、氷点下四十五度まで下がるのが常態である。
 六月二十日、この町で三十八度(華氏百・四度)という、観測史上最高の気温が報告された。確認されれば、北極圏内の最高気温である。デンマーク気象研究所の気候学者、マルティン・ステンドル氏はツイッターで、今年のシベリアについて「気候変・・・