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経済

ニチイ学館「創業者死後」の迷走

MBO巡るファンドの攻防戦に

2020年7月号

 介護業界最大手のニチイ学館が揺れている。米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBO(経営陣が参加する買収)を実施すると五月八日に発表し、当初は六月二十二日がTOB(株式公開買付)の最終日だったが、ベインは最終日の昼に七月九日まで期限を延長すると発表した。ニチイ学館の株価がTOB価格の一株一千五百円を一貫して上回り続けたからだ。そもそも今回のMBOは「創業家の節税目的だけでなく、後継者問題の仕切り直しも絡んだ案件」(ニチイ学館関係者)という。
 ことの発端は、ニチイ学館を創業した寺田明彦氏が現役会長のまま二〇一九年九月にすい臓がんで亡くなったことだった。企業による本格的な介護サービスを日本で初めて立ち上げ、絶対的権力者として君臨した明彦氏の八十三歳での死。そこから歯車は狂い始めた。
 明彦氏が当時保有していたニチイ学館株は「二百億円を超える」(介護業界関係者)とされていた。妻の邦子氏ら親族で持ち株を相続したとされるが、問題となったのは巨額の相続税だ。市場で保有株を売れば株価は暴落するし、創業家としては株主の座を守りたい。相続税を払える現金を手にできて、株主で居続・・・