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経済

《クローズ・アップ》辻 朋邦(サンリオ次期社長)

「六十年ぶり社長交代」の暗い前途

2020年7月号

 サンリオの創業者であり、ほぼ六十年間にわたって社長の座にあった辻信太郎氏(九十二歳)が退任し、孫の辻朋邦氏(三十一歳)が新社長に就任する。サンリオの業績不調や将来への不安を前面に出した日本のメディアより、英BBCや米CNNの報道の方がより詳細で、好意的という珍しい社長交代発表となった。
 それだけ「ハローキティ」をはじめとするサンリオのキャラクターが世界に広がり、好かれている証しでもあろう。二〇一九年三月期では売上高の三六・〇%を海外が占め、営業利益も国内ライセンス事業に肩を並べる実績。「世界のキティ」は健在だ。
 だが、サンリオ全体の業績は右肩下がりの悪化を続けている。〇五年三月期に一千十一億円あった売上高は一九年三月期に五百九十一億円と十四年間で四一・五%減。営業利益も同じ期間に二一・九%減少した。この業績をみれば、同族企業であっても社長が交代していて当然。まして一部上場企業のサンリオであれば、取締役会で社長交代の緊急動議が出てもおかしくはない。
 辻信太郎氏が悪化する業績を立て直せないまま、トップにとどまれたのはキャラクタービジネスで成功した同氏に・・・