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西側同盟の止まらぬ「内部崩壊」

「駐独米軍撤退」でNATOは瀕死に

2020年7月号

 ドナルド・トランプ米大統領が、ドイツ駐留米軍を今秋までに、九千五百人削減する方針を表明した。これは現在の駐留独軍の四分の一以上の兵力で、欧州の安全保障地図を劇的に変える。ドイツはもとより、北大西洋条約機構(NATO)のほぼ全加盟国に衝撃を与えた。
 発言は、十一月三日の米大統領選目当てのもので、実行の可能性は低い。だが、欧州では今や「米国抜きの欧州安保」構築が喫緊の課題だ。ホワイトハウスの主が誰になっても、米欧による「西側同盟」の内部崩壊は、国際政治の大きな潮流として続きそうだ。

隠された「NATO分裂」が表出

 駐独米軍の撤退がいかに衝撃的なものかは、ラムシュタイン空軍基地がある、カイザースラウテルン郡一帯を訪ねれば分かる。
 フランス国境からほど近い、のどかな一帯で、サッカーファンには「FCカイザースラウテルン」の地元として有名だ。この地の名を冠した郡と市は、合計で人口十万人ほど。空軍基地は単独で約五万人(人口統計には含まれない)の人員と家族を維持する。
 沖縄県・嘉手納空・・・