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中国が目指す海南島「香港化」

業績なき習近平がまた「大風呂敷」

2020年8月号

 中国が香港に対する国家安全法制の導入を打ち出し、国際社会が騒然となっていた頃、北京の共産党指導部は次の一手を繰り出していた。その主舞台は香港から西へ五百キロに位置する「島」である。
 六月一日、党中央と国務院(政府)は「海南自由貿易港建設全体計画」を発表した。習近平国家主席の重要指示で「(海南島の)思想を解き放ち、大胆に革新せよ」と発破をかけ、現地に乗り込んだ韓正副首相も「これは習総書記が自ら計画し、推進する一大事業だ」と鼓舞する力の入れようだった。
 海南島を開放し、経済発展につなげるという発想そのものは、実は以前からあった。習氏は二〇一八年四月、海南島を中国十二番目の自由貿易試験区にすると発表。だが、その後二年余りを経ても具体案は示されず、停滞感さえ漂っていた。そこへ降って湧いたかのような今回の発表である。
 今回の計画をつぶさに見れば、規制緩和でヒト・モノ・カネを呼び込み、経済成長の核にするという戦略は明らかだ。

ネックは通貨と「自由」

 まず、生産設備や車両、船舶など島・・・