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政治

菅義偉「政権獲り」に野心露わ

霞が関支配とコロナ禍を追い風に

2020年8月号

 秋田から地縁も血縁もない横浜に出て、苦労の末に内閣官房長官まで這い上がり、「艱難汝を玉にす」を地で行く菅義偉でも、辛酸は何度も舐めたくないのだろう。権勢に陰りが見える中、「ポスト安倍」をにらんだ権力維持に向けての攻勢に転じている。背景には、いったんは遠ざかった総理大臣の座が、新型コロナウイルスの感染拡大の思いもかけぬ影響で、再び視野に入ってきたことがある。
 菅の鼻息の荒さは、七月十四日の閣議決定に表れていた。財務省主計局長に主税局長から矢野康治が引き上げられ、外務省北米局長には前駐米国公使の市川恵一が起用された中央省庁人事である。二人とも二〇一二年に安倍晋三が総理大臣に返り咲いた後、官房長官秘書官を務めた共通項がある。
 矢野は菅の秘書官を務めた後、財務省官房長として森友学園への国有地払い下げに関する文書改竄問題や財務次官によるセクハラ事案などの醜聞処理に当たり、世間では悪役として認知されているが、安倍や副総理兼財務大臣・麻生太郎らへの責任問題の波及を阻止し、政権内の評価は高い。
 とはいえ、財務省主流から外れたキャリアを歩んできた矢野が、同じ一九八五・・・