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連載

広告を裏読みする 第20話

健康「似非科学」に加担する朝日新聞
本誌編集部

2020年8月号

 世に高齢者を騙す健康「似非科学」は溢れ返っているが、かの朝日新聞が悪事に加担したとなると無視はできない。六月十四日に食品会社の明治が出稿した「最新研究で判明 認知症予防にカマンベールチーズを」という全面広告が、医療関係者の間で「噴飯モノ」と話題になっている。広告の中で明治はアルツハイマー型認知症などの病名を挙げて、予防効果について言及している。
 カマンベールとは白カビで覆われたクリーミーなチーズで、スーパーで売っているありふれた食品だ。これを食べるくらいで認知症が予防できるなら、世界的な発見ではないか。明治が根拠として挙げるのは、以下の二点だ。
 まず明治が桜美林大学、東京都健康長寿医療センターと共同で実施した臨床試験で、軽度認知障害患者にカマンベールを食べさせたところ、BDNFという物質の血中濃度が上昇したこと、もう一つは認知症患者では血中のBDNF濃度が低下し、認知機能とBDNF濃度には正の相関があるとする先行研究だ。この結果により、カマンベールを食べて、BDNFの量が増加すれば、認知症を予防できると主張している。
 BDNFとは、脳由来神経栄養因・・・