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経済

東芝・車谷「社長続投」で悪あがき

「物言う株主」との熾烈な暗闘

2020年8月号

 東芝の車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)は七月、眠れない一カ月を過ごす羽目になった。七月三十一日の株主総会に向けて、二つのファンドから社外取締役の選任を求める株主提案が出たからか。そうではない。じつは車谷にとって株主提案が通るか通らないかは二の次。最も大事なことは「自分のクビ」だった。
 東芝に株主提案を出したのは、いずれもシンガポールに拠点を置くエフィッシモ・キャピタル・マネージメントと3D・オポチュニティー・マスター・ファンドだ。東芝株を一五%強持つ筆頭株主のエフィッシモは三人、同じく四%程度を保有するとされる3Dは二人の社外取締役の選任を求めた。
 特にエフィッシモの株主提案はマスコミで盛んに取り上げられ注目を集めた。エフィッシモは、東芝のIT子会社で循環取引が起こったことを理由に、東芝のコンプライアンス体制が現在も不十分だと主張。杉山忠昭・元花王執行役員や、竹内朗弁護士といったコンプライアンスの専門家を社外取締役候補として推薦した。だが最大の目玉は候補者自身ではなく、不祥事などを起こした企業が設置する多くの第三者委員会で活躍し、その業界では第一人者、コ・・・