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社会・文化

先細る「日本遺族会」の現状

かつての「聖域」が探る延命策

2020年8月号

 八月十五日、今年も日本武道館で全国戦没者追悼式が執り行われる。今回は、新型コロナウイルスの影響を受け、例年六千人にのぼる参列者を約一千四百人にまで絞り、ソーシャルディスタンスなどに配慮した式典になる。最大のネックとなったのは、戦没者遺族が例外なく高齢であること。「万が一にでも参列者から感染者を出さないように準備が行われている」(厚生労働省担当記者)。毎年、各都道府県から五十五人ずつの遺族が公費で招待されるが、今年は二十人に抑えられる代わりにネット中継などを拡充する予定だという。
 終戦から七十五年を迎える中、いわゆる戦没者遺族が減少していくのは自然の流れだ。一般財団法人「日本遺族会」の会員数も減少の一途で、今後どのように組織を運営していくのかという分岐点に立っている。本来は遺族会だけでなく、他の国民も含めて過去の戦没者をどのように追悼するのかという議論が必要だが、思うようには進まず、むしろ遺族会が孤立しかねない瀬戸際だ。

「集票力」にも陰り露わ

「青森の遺族会のニュースは衝撃的だった」
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