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択捉島で進む「軍事要塞化」

安倍「対露交渉七年」の無惨な結果

2020年9月号

 第二次世界大戦の戦勝神話を新たな国家イデオロギーに据えたロシアのプーチン政権は、五年おきの節目の年に全土で対独戦勝を盛大に祝うが、そのたびに日露関係が打撃を受けてきた。ロシアは日本を「ナチス・ドイツの同盟国」として槍玉に挙げ、北方領土返還要求の粉砕を図った。
 戦勝六十周年の二〇〇五年、プーチン大統領は領土問題で、「四島はロシアの主権領土であり、第二次大戦の結果だ。国際法で確定している」と述べ、ソ連時代の解決済みの姿勢に戻った。前後して、日本叩きの書籍や論文が大量に刊行された。
 六十五周年の一〇年には、事実上の対日戦勝記念日を制定。メドベージェフ大統領がロシア首脳として初めて国後島を訪れた。七十周年の一五年には、首相に転出したメドベージェフが国後を再訪。戦勝式典を中国と共催し、プーチンは五月九日の式典で初めて「日本軍国主義」に言及した。
 七十五周年の今年七月は、「領土割譲禁止」条項を含む憲法改正を行った。改憲部分は、近隣諸国との領土交渉は例外と規定したが、ザハロワ外務省報道官は「日本との問題は例外規定の対象にならない」と断言した。五年おきに、領土交渉・・・