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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》 安倍最長政権

歴史的成果「ゼロ」で終わった理由

2020年9月号

 アベノミクスで始まり、アベノマスクに終わる安倍政権。憲政史上最長の勲章があまりに空しい。「戦後最長の景気拡大」はコロナ感染拡大前にメッキが剝げ、今や「戦後最悪の落ち込み」に暗転。株価以外、財政も賃金も成長戦略もいいところなく、成果は二度の消費税率引き上げだけだった。無数のキャッチフレーズを思い出すだに腹立たしい。外交もトランプ米大統領の「ポチ」に徹し、プーチン露大統領と二十七回も会って、何が得られたのか。歴史に刻まれるのは、これほど長くてこれほど何もできなかった徒労感である。そこにはよほど深刻な構造的欠陥があったと考えざるを得ない。
 やや旧聞に属するが、コロナ危機下で政界と世論を揺るがし辞任した黒川弘務元東京高検検事長の問題を糸口に解き明かそう。安倍官邸はなぜあれほど黒川氏を重宝し、強引に残したがったのか。
 マスコミは、黒川氏が法務省の官房長五年・事務次官二年半の長期にわたって政権(うち一年余は民主党)に仕えたのは、不祥事を起こした閣僚が刑事事件で立件されないよう水面下で動いたからではないかと書き立てた。小渕優子元経済産業相、松島みどり元法務相(二〇一四年)、・・・