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金正恩は菅政権をどう見るか

日朝対話に再開の兆しあり

2020年10月号

 菅義偉政権の発足で、凍結されていた日朝対話再開に向けた水面下の瀬踏みがみられる。官房長官時代に拉致問題担当相を兼務した菅首相は、就任会見でも「一刻の猶予もない。不退転の決意で臨む」と強調した。
 一方の北朝鮮も、国連制裁、新型コロナ、自然災害の三重苦で、三度にわたる台風直撃により食糧危機が予想される。来年一月の招集が決まった第八回朝鮮労働党大会は、一定の改革・開放を打ち出すとの見方が有力。北朝鮮は二〇〇二年、対米交渉停滞、対中関係冷却、対韓関係悪化の中で、日本に接近し、小泉純一郎首相の訪朝が実現した。北朝鮮をめぐる内外環境は、小泉訪朝前夜に似てきた。
 昨年まで安倍晋三前首相に対して、「ならず者」「白痴」などと罵詈雑言を浴びせた北朝鮮の報道機関は、八月二十八日の退陣発表後、日本批判を避け、静観する姿勢に転じた。
 最高指導者の金正恩朝鮮労働党委員長は八月十日、水害に見舞われた南西部・黄海北道を視察した際、自らハンドルを握って集落を回ったが、運転したのは愛車のドイツ製ベンツではなく、トヨタ・レクサスのSUVだった。外交筋は「日朝交渉再開を示唆する日本へのシ・・・