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政治

「菅おろし」の不吉な予兆

《政界スキャン》

2020年10月号

 七年九カ月ぶりで新しい首相が誕生し、自民党総裁選は空前の得票率七割超えで圧勝、世論の支持率も高いというのに、政界は一向に弾まない。それどころか霞が関には、伏し目がちの緊張した空気が重く垂れ込める。菅義偉新政権の陰うつな船出である。
 理由は、出口の見えないコロナ感染症への不安、官僚支配が強まる怯えだけではないだろう。世論の異様に高すぎる期待と、政官界がよく知る菅氏の実像との落差も、このままで済むはずがないと不吉な胸騒ぎをかき立てる。
 だが、何にも増して不気味なのは、安倍晋三前首相から菅首相へ、順当そうに見えて企みの気配に満ちた「禅譲」に潜む闇である。こうなるしかなかった、これで良かったんだ、と多くの人が自分に言い聞かせようとしても、胸の底では釈然としていない。
「継承政権」のいびつさは、安倍氏自身が退任早々、応援団である読売新聞の単独インタビューに登場し、あからさまにした(一報は九月十八日付朝刊)。
 不治の病の悪化で、またも政権を途中で投げ出した不面目な立場でありながら、安倍氏は「まだ体力がある中で交代する、あえてこういう判断をした」と強弁・・・