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経済

日本製造業「壊滅」の近未来

コロナで早まる「英国化」の悲劇

2020年10月号

 収束しないコロナ感染と激化する米中冷戦が、日本の主軸産業である自動車と化学に襲いかかっている。グローバル需要の落ち込みに加え、自動車の電動化(EV)がこの機に加速、トヨタ自動車すら先頭集団から脱落し始めており、自動車向け供給で命脈を保ってきた化学・鉄鋼など素材産業も転落が始まった。電子産業は既に壊滅し、十年後には日本は「リーディング産業なき国家」となる構図が見え始めた。リスク回避と目先の投資効率にこだわり、成長への野心と〝野性〟を失った経営者群と補助金しか政策を持たない経済産業省、官邸の失策のツケである。日の丸製造業の沈没は間近に迫っている。

弱者産業連合に転落

「自動車産業が健在なら大丈夫」「トヨタがある」。日本産業について、日本人の多くはこう考えてきた。実際、一九九〇年代以降、自動車は日本の輸出額の一五~二〇%を稼ぐ最大最強の輸出品であり、九五年に六兆七千六百十二億円だった輸出額は二〇一八年には十六兆二千九百八十一億円まで拡大した。産業分野別付加価値では「輸送用機械」として、一八年に製造業全体の一七・六・・・