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連載

新大学評判記 第10話

東京理科大学 結果が出ない多角化と拡張戦略

2020年10月号

 JR総武線飯田橋駅近くに広がる神楽坂キャンパスは、電車の窓から望める好位置だけに多くの人は東京理科大学の存在を認知している。だが、全国的な知名度は一万五千人を超える学生を抱える大学としては、決して高くはない。偏差値は東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学など都内のトップクラスの大学とは大きな格差があるものの、全般に真面目な学生が多く、予備校業界の評価は「二流の秀才」が集まる学校。
 一八八一年に東京物理学講習所として創設され、自然科学の研究・教育で実績をあげてきた。他の私立大学の理工系学部が明治時代の新国家建設に必要だった建築、機械、電気など工学部先行だったのとは一線を画している。ただ、理学系の研究者を輩出するというよりも、全国の高等教育機関で教鞭を執る教師の育成が中心で、いまなお中学、高校の理数系教員では理科大出身者が大きな存在感を持っている。
 戦後、ベビーブームと大学進学率の上昇の波にのって、学部の多角化に乗り出し、一九六〇年に薬学部、六二年に工学部、六七年に理工学部、八七年に基礎工学部を創設した。ただ、理工学部は千葉県野田市、基礎工学部は北海道長万部町と、神楽・・・