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社会・文化

コロナ禍で加速する「出産減少」

結婚・子作りへの影響が長期化

2020年10月号

「人口は嘘をつかない」。ソ連の崩壊を人口減少から予想したフランスの歴史学者のエマニュエル・トッドは、新型コロナウイルスの感染拡大によって日本の衰退が加速すると警告している。言うまでもなく、日本の最弱点は少子高齢化。生産力の低下と国内市場の縮小が加速度的に同時進行していく。「(コロナ禍で)新しいことは何も起きていない。既に起きていたことを露呈させ加速させている」(『大分断』二〇二〇年PHP新書)というのが彼の黙示だ。
 今や人と人との触れ合いは悪だ。政府は「ソーシャルディスタンス」「三密回避」を錦の御旗のように掲げる。しかし、出会いが減れば子どもをつくる機会も減る。直接会わないことが新しい生活様式として定着すれば、コロナ禍が落ち着いた後も結婚が減り、出生率は大きく低下する。また、コロナ禍による失業や減収の影響で、結婚や出産を望んでいても諦めるカップルが増える。
 政府は、目先の対策に手いっぱいだが、来年の夏以降、出生率のさらなる低下という恐るべき現象を目の当たりにすることになるだろう。二〇一九年の出生数は八十六万五千二百三十四人(概数)と、はじめて九十万人を割り込み、・・・

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