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米国は「尖閣」を守らない

「第一列島線」を諦め始めた米軍

2020年11月号

 日本の尖閣諸島周辺が今秋、中国海警局の船による領海侵入で、再び緊迫している。十一月三日投票の米大統領選とその後の混迷を見越して、日本にじわじわと圧力をかける戦術である。
 菅義偉首相にとって悪いことに、米国からは「米軍は有事に尖閣諸島を守らない」というシグナルが、続々と届いている。

戦略爆撃機が西太平洋から消えた

 尖閣諸島から遠くない海の話だ。
 中国人民解放軍は今年、南シナ海と東シナ海、黄海、渤海の四海域で断続的に、大仕掛けの軍事演習を行い、台湾を威嚇した。
 米軍は四月、グアム島の基地で、B52など多数の戦略爆撃機が隊列を組んで走行する「エレファント・ウォーク」を実施した。
 ずらり並んだ爆撃機の滑走路行進は、米軍の伝統で、迫力抜群だ。中国に対抗するための、示威行動かと思いきや、爆撃機が飛び立った先は全く違っていた。数日後、米軍の爆撃機はすべて、本土ノースダコタ州の基地に着陸した。
 台湾海峡で軍事緊張が高まっているさなかに、米国の軍事的切り札が本土に・・・