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社会・文化

菅と維新が追う「道州制」の幻影

富山県知事選「現職敗北」の真相

2020年11月号

 首相・菅義偉にとって、“この国のかたち”とは何なのか―。
 行政のデジタル化、携帯電話料金の引き下げ、不妊治療の保険適用など、打ち出されるのは部分最適の政策ばかりであり、国家観がないと言われる。唯一のビジョンは、秋田県のイチゴ農家出身の苦労人らしく「地方創生」だ。安倍晋三政権の官房長官時代にこう語っている。
「中央から権限と財源を移譲し、地方が地方交付税に頼ることなく生きられる、そういう国にしたい」
 その真意は、道州制の導入である。もちろん、菅はおくびにも出さない。かつて自民党道州制推進本部は、都道府県を廃止し、全国を十程度にエリア割りする構想を掲げ、議論の場となる「国民会議」を設置する基本法案をまとめたが、全国町村会、全国市長会の反発は激しく、国会提出できなかった。同本部も二〇一八年に解散し、以来、道州制は自民党のタブーとなっている。
 政権発足したばかりの菅が、あえて虎穴に入るわけがない。しかし、道州制の機運は西から高まっていくかもしれない。それを占う菅政権初の大型選挙が行われた。外形上の結果は菅の黒星である。{b・・・