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経済

《企業研究》第一生命

巨額「顧客詐欺事件」の根深さ

2020年11月号

 稀代のペテン師か、それとも狂言回しを演じただけなのか。第一生命ホールディングス(HD)傘下の生保大手、第一生命保険で前代未聞ともいえる巨額詐欺“事件”が発覚した。
 西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)に勤務する八十九歳の女性営業社員が「第一生命の『特別枠』があり、高金利で運用できる」などと顧客に架空の金融取引を持ち掛け、不正に金を集めていたというもので、被害者は十年以上前から今年四月までの間で少なくとも二十一人。詐取された金額は一人当たり数百万円から最大二億八千万円まで、現時点で判明している分だけで総額十九億円にも上る。
 一九七三年の滋賀銀行事件や八一年の三和銀行(現三菱UFJ銀行)オンライン詐欺事件など戦後の金融裏面史を彩ってきた女性は少なくない。今年七月にも愛知銀行蟹江支店を舞台にした、六十歳(当時)の女性行員による九千二百万円窃盗・横領事件が表面化している。ただ冒頭の十九億円という被害額は、一女性による犯行としては「空前」とも言われてきた滋賀銀行事件の実に二倍超。「恐らく『絶後』という枕詞も付くのは確実」と金融関係者らは・・・

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