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連載

Book Reviewing Globe 439

コロナが問う国家の正統性

2020年12月号

 国家の正統性(レジティマシー)はその国の国民の安全を守ることができるかどうかにかかっている。
 この自明の理を最初に体系的に唱えたのは十七世紀の政治思想家、トマス・ホッブズである。人間の一生は「孤独で、貧しく、意地悪で、残忍で、そして短い……なぜなら人々は常にいがみ合い、戦い合っているからである」。安全と平和のためには大きな政府(レヴァイアサン)が必要なのである、と彼は説いた。それまで王権は、臣民との契約ではなく神から授けられた権利、つまり神権論に基づいて神秘化されてきた。それが国民を守る結果を出さなければならなくなった。出せなければ信を失い、権力を賦与される資格も失う。
 新型コロナウイルスは、それぞれの国の国民に「あなたの国はCovid-19の脅威からあなたをどこまで守ってくれていますか」という問いを投げかけている。言い換えれば、それぞれの国家に体制と統治の正統性のテストを課している。
 これまでのところ、米国と英国の二カ国は落第である。ベトナム、中国、韓国は及第点を取っている。いや、より広い文脈で言えば、対コロナ戦では、・・・