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アリババを食い殺す中国共産党

成長企業「国家管理」で経済自沈へ

2020年12月号

 中国政府は十一月三日、国内最大のEコマース企業、アリババ傘下の金融会社、アント・グループの上海、香港での新規株式公開(IPO)を延期させた。金融当局を批判したアリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)の“舌禍”が原因とされるが、それはきっかけに過ぎない。中国経済のグレーゾーンで急成長を遂げたアリババ、テンセント、美団点評などデジタル・プラットフォーマーに対する粛清が始まったのだ。背景には米中冷戦を戦い抜くための、習近平政権のデジタル経済支配への野望と足元で拡大する金融のシステミック・リスクがある。
「中国共産党の新たな整風運動(反対派への粛清活動)が始まった」(中国の政府系シンクタンク研究員)。予兆はすでに九月にはあった。中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は、消費者向け小口ローンの上限金利を現行の二四%から一五・四%に引き下げる方針を打ち出した。コロナ禍で経営が悪化している中小企業や個人への支援が目的だが、同時にアントなどが展開するネット融資を厳格管理し、アリババへの圧力を高める狙いがある。
 アントはアリババの展開する天猫、淘宝網などE・・・