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連載

本に遇う 第252話

秋田魁新報社の闘い
河谷 史夫

2020年12月号

 消失の時代である。
 ANAもJALも歴史的な赤字だそうだ。部数消失が囁かれる新聞に「国際線需要が消失」という見出しが躍る。見えないウイルスのせいで飛べない航空機が、空港の駐機場に翼を並べている。
 縁も義理もない、そもそも参政権がないアメリカの大統領選挙の開票速報にいちいち付き合わされたのは、われながらご苦労様だったが、トランプがツイッターで「投開票日の夜遅く、私は大幅にリードしていたのに、数日が経過すると、リードは魔法のように消失した」と独白したというのには思わず笑った。開票所は甲子園に似て魔物が出るということをトランプは知らなかったらしい。
 票は一律には開かない。出口調査のないころの新聞記者には、開票台の票の動きに目を凝らすという任務があった。票の束をわざと隠す立会人がいたのだ。敗勢だった候補が土壇場で逆転することも珍しくなかった。逸って当確を打って間違えるときは、決まって隠し票という魔物が現れていた。
 トランプには郵便投票が隠し票だった。アルバート・ゴアやヒラリー・クリントンがした敗北宣言を拒み、選挙制度の攻撃に躍起である。老いたる・・・